赤い月 参
復讐
私は何をしてきたんだろう。
私は何をしているんだろう。
私は何をしようとしている…?
昨日まで強固だと思っていた足元が、今にも崩れそうな音を立てる。
復讐。
それ以外考えていなかった。
いや、考えないようにしてきた。
挫けそうになる度に家族の無残な最期を思い出し、自分を奮い立たせてきた。
なのに…
『心は自由であるべきなのじゃ』
鬼が言った。
憎悪と復讐の対象である、鬼が。
解放されてもいいんだろうか。
自分の人生を生きてもいいんだろうか。
悲しみが消えることはないだろう。
だが、それを飲み込み、乗り越えて、自由に…
いや、考えるな。
思い出せ。
あの、愛する者の血で彩られた光景を。