赤い月 参
水に濡れた様子もなく光の中に浮かび上がる、二人の人物。
テレビや映画でしか見たことがない古い衣装を着た、澄んだ海のような碧い肌をした少年。
その隣に立つ、赤い着物を遊女のように着崩しているのに、やけに高貴な…
(うさぎさん…)
池の光は小さくなるのに。
闇夜が戻って来たのに。
彼女が放つ銀の光は消えない。
夜を、闇を、統べるオニ。
水原は唇を噛んでうさぎを睨んだ。
その視線を感じたのだろうか、うさぎが彼に気づいて目を見開いた。
「尚人…」
「あれ、誰?
さっきはいなかったよ?」
不思議そうにうさぎの袂を引いた少年が、急に何かに思い当たったかのように、金の瞳で鋭く水原を射抜いた。