赤い月 参
人を簡単に寄せつけないための術が施されているらしいこの場所に、自由に出入りできる者。
それ即ち…
「おまえか、人間。
ボクの泉を穢したのは。」
少年…蒼龍から突如として放たれた威圧感は、容赦なく水原を襲った。
立っていられないほど足が震える。
だが彼は必死で自分を鼓舞し、掠れた声を張り上げた。
「妖魅共め、私のチカラを奪いに来たのか!!」
「おまえの力?」
険しく言い募ろうとする蒼龍を、うさぎが手で制した。
蒼龍は不満げにうさぎを見上げたが、彼女の瞳はずっと水原だけを映している。
一瞬長い睫毛を伏せた後、うさぎは少し悲しそうに微笑んだ。
「すまない、尚人。
この泉は消させて」
「なんで姫が謝るの??!!」
今度は苛立ちを露にした蒼龍の絶叫が、うさぎの言葉を遮った。