赤い月 参
蒼龍が泉を引いている。
始まってしまった。
身を守るすべを持たない水原を、ここに残したまま。
もう、やるしかない。
時間がかかればかかるほど、景時の負担は重くなる。
そもそも大地の怒りを鎮めるなど、人間には過ぎた役割なのだ。
だが…
出来る。
景時なら。
うさぎは景時が思うより深く、彼に信頼を寄せていた。
うさぎは祈るように天を仰いだ後、指に灯した炎を水原に向けて放った。
足元に落ちた炎は瞬く間に燃え上がり、水原を包み込む。
「うさぎさん!!」
『大人しくしておれ、尚人。』
水原を見ることなく彼を呪で縛ったうさぎは、泉に両手を翳した。