赤い月 参

蒼龍が泉を引いている。

始まってしまった。

身を守るすべを持たない水原を、ここに残したまま。

もう、やるしかない。
時間がかかればかかるほど、景時の負担は重くなる。

そもそも大地の怒りを鎮めるなど、人間には過ぎた役割なのだ。

だが…

出来る。

景時なら。

うさぎは景時が思うより深く、彼に信頼を寄せていた。

うさぎは祈るように天を仰いだ後、指に灯した炎を水原に向けて放った。

足元に落ちた炎は瞬く間に燃え上がり、水原を包み込む。


「うさぎさん!!」


『大人しくしておれ、尚人。』


水原を見ることなく彼を呪で縛ったうさぎは、泉に両手を翳した。

< 187 / 223 >

この作品をシェア

pagetop