赤い月 参

いつもは雪のように白い頬を紅潮させ、眉を顰めて固く目を閉じる。

薫の結界を破ってしまわないよう、うさぎは強大な鬼気を泉に集中させた。

力の流れと強さを、全身で感じる。

泉を引く、蒼龍の力。

母胎を奪われまいと抗う、黒く凶々しい力。

そして‥‥‥


(景時…)


泉が白く泡立ち、中心がジワジワと持ち上がる。

土が盛り上がり、木々が根倒れしていく。

地が音を立てて畝り、亀裂が走る。


(後少し…
堪えろ、景時。
褒美でもなんでも、望みのままにくれてやる。)


うさぎが目を見開いた。
ルビーの瞳が赤い閃光を放つ。

次の瞬間、グラグラと沸騰した鍋の湯のように揺らいでいた泉の水が、地上から浮き上がった。

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