赤い月 参
「景時です。
只今、参りました。」
板張りの廊下に膝を着き、襖の向こうの座敷で既に待機しているはずの秋時と勘違い野郎に声をかける。
「おう、入れ。」
景時は静かに襖を引き、一礼してから上げた顔を真っ直ぐソイツに向けた。
30才前くらいだろうか。
黒髪をキレイにセットし、皺一筋ない紺のスーツを着込んでいる。
銀縁眼鏡をかけたその顔は整ってはいるものの、どこか神経質そうな印象を見る者に与える。
背筋を伸ばして正座する姿は、嫌味なほど隙がない。
なんていうか…パーフェクト。
湯呑みを手にしたミスター・パーフェクトは、冷たい目で景時を値踏みするかのように眺めた後、その後ろに視線を移し…