赤い月 参

安堵したのも束の間、水原は目の前の光景に鋭く息を飲んだ。


「きゃー」


「うさぎさん??!!」


うさぎが堕ちた。

暴れる『闇』の中心に。

オニと言えども限度があるのだろう、チカラを使い果たしたのかも知れない。

思わず皺になるほどYシャツの胸元を握りしめ、水原は気づいた。


(動ける。)


躊躇いはなかった。

憎悪も復讐も忘れていた。

水原は安全地帯を脱け出し、うさぎの元へ駆けた。

彼ではどうすることもできない、『闇』の深淵へ…

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