赤い月 参

捕まえておきたいのに、動けないのがもどかしい。

景時はなんとか片腕を上げ、うさぎに手を伸ばした。


「案ずるな。
蒼とまだ残っておる龍泉を引き揚げにゆくだけじゃ。
存外危ないし、もう必要なかろう。」


うさぎが苦笑しながら、景時の手を自ら取って言った。

そして水原に視線を移す。


「二人を頼んだぞ、尚人。」


「任せてください。
‥‥‥うさぎさん。」


水原が片膝を地に着き、景時の隣に腰を下ろすうさぎのもう片方の手を握った。


「俺の父は教師だったんです。
『子供を導くのが、俺の使命だ』って、いつも言ってる熱い人で…
俺、憧れてたんです。」


あー… 使命…
親子だねぇ…


「だから…もう一度勉強し直して、教員免許を取ろうと思います。
『闇』を抱えこまない、強い人を育てるためにも。」

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