赤い月 参

ハイ、嘘ー。
うさぎばっか見てたじゃねーかよ。

渋い顔で返事をしない景時に、居住まいを正した男は作り笑いを浮かべて挨拶した。


「初めまして。
高杉景時さんですね。
お名前は秋時さんから伺っております。
私は水原尚人(ミズハラナオト)と申します。」


「…
景時デス、コンニチハ。
ナンノゴヨウデショウカ。」


挨拶の間も、斜め後ろに控えたうさぎにチラチラ流れる水原と名乗る男の視線に、景時の機嫌はますます悪化する。

苦笑混じりの秋時が、取り成すように声をかけた。


「あー、水原さんは『劉聖会』の方なんですか?
私の記憶では、確か『劉聖会』はもう…」


「ええ。
その前に…劉聖会の残党が多大なご迷惑をお掛けしまして、申し訳ありませんでした。
ご存じの劉聖会はもうありません。
ですから私は、オニに対抗できる新しい組織を発足させるつもりなのです。」

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