赤い月 参

その男…高杉景時(タカズキカゲトキ)はガックリ肩を落として、深い溜め息を吐いた。


「だよねー?
前に言ってたよねー?
でも、そろそろストーカーから昇格させてくれてもよくない?」


いつも笑みを絶やさない甘く整ったその顔を不服そうに顰め、赤く染めた長めの猫毛を掻き上げる。


(今のは、結構イイカンジのシチュエーションだったと思うンだケド。)


切なさと色気を含んだ言葉。
吐息を感じる距離。
そして窓の外に広がる、宝石を散りばめたような夜景。

フツーならイケるよね?
空気くらいは読めるよね?
ストーカーはナイよねぇぇぇ?

それなりに場数を踏み、同年代の野郎共よりは遊び慣れていると自負している景時だが、その女にだけは完全にお手上げ状態。
手も足も出ないとは、まさにこのことだ。

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