赤い月 参

「さて、私の話にご納得いただいたところで…」


二人の沈黙に自らの勝利を確信したのだろうか、水原は満足そうな笑顔でまた眼鏡の位置を直して言った。


「景時さんへのお願いなのですが。
あなたの妖魅を譲っていただきたい。」








ナンテ?


「彼女がそうなのですか?
人間に見えますが…変化を?
妖狐の類いですか?」


「ムリ。」


景時は体半分移動して、水原の視線から庇うようにうさぎを背に隠した。


「なぜです?
あなたの『浄化』の力を浴び、かなり弱っているのでしょう?
『鬼寄せ』を破り、変化まで可能な妖狐を使役できるほどの力をお持ちなら、新たな妖魅を手に入れることなど容易いのでは?」


「そーゆー問題じゃねぇンだよ。」


「もちろん相応の代金はお支払いします。
それに、凶悪な妖魅を野に放つ気はありませんよ。
ドラゴンへの捧げ物にするのです。」

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