赤い月 参
「さて、私の話にご納得いただいたところで…」
二人の沈黙に自らの勝利を確信したのだろうか、水原は満足そうな笑顔でまた眼鏡の位置を直して言った。
「景時さんへのお願いなのですが。
あなたの妖魅を譲っていただきたい。」
…
…
…
ナンテ?
「彼女がそうなのですか?
人間に見えますが…変化を?
妖狐の類いですか?」
「ムリ。」
景時は体半分移動して、水原の視線から庇うようにうさぎを背に隠した。
「なぜです?
あなたの『浄化』の力を浴び、かなり弱っているのでしょう?
『鬼寄せ』を破り、変化まで可能な妖狐を使役できるほどの力をお持ちなら、新たな妖魅を手に入れることなど容易いのでは?」
「そーゆー問題じゃねぇンだよ。」
「もちろん相応の代金はお支払いします。
それに、凶悪な妖魅を野に放つ気はありませんよ。
ドラゴンへの捧げ物にするのです。」