赤い月 参

速い。

だが、遅い。

うさぎへと伸びる水原の手を、景時が掴んだ。

人差し指と中指の間には、羊皮紙だろうか、少し厚めの紙が挟まれている。


「くっ… 放せ!」


水原は必死に腕を引くが、掴まれた手首はびくともしない。


(チっ
妖狐程度にいいようにされてる、クソガキが!)


景時は頭半分ほど下から忌々しげに睨みつけてくる水原を見下ろして、不愉快そうに眉根を寄せた。


「いやいや。
怒ってンのは俺だから。
俺のうさぎにナニする…
って、うさちゃん??!!」


うさぎの細くしなやかな指先が、水原が手にしていた紙をひょいと抜き取った。

途端に水原が勝ち誇ったように高笑いを始める。

< 33 / 223 >

この作品をシェア

pagetop