赤い月 参
「フハハハハハ。
バカめ。
自らペンタクルに触れるとは!
これでおまえの力は封じ」
「これが西洋魔術というものか?」
今まで完全に気配を断ち、美しいが無機質な人形のようだったうさぎが、ここにきて初めて言葉を発した。
紙に描かれている、円の中の星形と見慣れない文字をまじまじと眺めて、指先を顎に当てて小首を傾げる。
「さっぱりわからぬ。
こんな物と先程の動きで捕らえられたと言うのなら、まだ人も喰ろうておらぬ生まれたての小鬼であろう。
そなた、幸運であったな。」
うさぎが紅い唇を尖らせて手にした羊皮紙に息を吹きかけると、黒いインクで描かれた図形が跡形もなく消滅した。
「手を放してやれ、か…ご主人様。
この程度の小者では、妾をどうすることもできぬ。」