赤い月 参

「や、ウソだから。
俺は永遠に君だけのストーカーだから。
そんなカッコで外行っちゃダメだから。
てか、うさぎは一人で外に行くのが既にダメ。」


景時は冷たい外気を送り込む開きかけた窓を慌てて閉め、『うさぎ』の前に両手を広げて立ち塞がった。

『鬼神うさぎ』(オニガミウサギ)
景時が愛しい鬼神につけた、今の世での名前だ。


「むぅ…」


頬を膨らませ、景時の胸の高さから上目遣いで睨んでくるうさぎを見て、渋かった彼の顔はたちまち甘く緩む。


(怒ってても可愛い…)


殺されそうだから、言わないケド。

逢った当初は美しいが冷たい彫像のように無表情だったうさぎだが、時が経つにつれ、様々な顔を見せてくれるようになった。
誰も気づけない彼女の表情の微妙な変化を、景時が見分けられるようになったせいなのかも知れないが。

< 5 / 223 >

この作品をシェア

pagetop