赤い月 参
キャっキャと笑い声が聞こえて、茶の間…いや、部室の扉が開いた。
冷たい空気と一緒に、祥子と小鞠が身を縮めて入ってくる。
「寒っ!!
ココ、まじ天国!」
「おー、授業終わったンか?」
「終わった、終わった。
てか、授業出ろ。」
「ムリ。
コタツから出る気は、ナイ!!」
ご尤もな祥子の意見に、薫が本日二度目のセリフを吐いた。
うさぎはコタツに入ってきた小鞠に、剥いたばかりのミカンを手渡している。
ん?
なんか足りなくね?
「祥子ちゃん、大吾は?」
「んー… なんか電話?」
景時の問いに、祥子のグロスで光る唇が開いた。
「なんかー…
最近変なんだよね、大吾。」
キレイにフレンチネイルを施した指先で、雑にミカンを剥いていく。
祥子は本当は器用なのか、不器用なのか。
その辺は景時には謎だ。