赤い月 参

景時は最近、本来の彼女は感情表現豊かな女性だったのではないかと、漠然と思うことがある。

だとしたら、うさぎを変えたのは…


「もうカーテンも閉めよ?
ほら、寒いし。
あったかいココア淹れるから。」


彼女と青白く光る月をさりげなく引き離す。
どこまでも落ちていきそうになる思考を無理矢理遮断して、景時はうさぎの細い腰を抱いてソファーに導いた。

閉じられたカーテンを名残惜しそうに見ていたうさぎだったが、最後の言葉に赤い瞳を輝かせる。


「そなたが?」


「もちろんですとも、お姫さま。」


景時が舞台俳優のような気取ったお辞儀を見せると、うさぎの口元が嬉しそうに綻んだ。

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