赤い月 参
開いた目を丸くして、水原はテーブルに身を乗り出す。
「じゃあ私と君たちは同志じゃないか。
なのになぜ、私を止めようとする?
うさぎさんを手離したくない気持ちは…まぁ、わかるが。
私がオニと闘うことまで否定する必要はないだろう?」
「危険だからであろうな。」
再びキッチンから出てきたうさぎが、滝のような黒髪を束ねていたシュシュをスルリと抜き取りながら言った。
「そなたの心は、憎悪に支配されておるようじゃ。
なんにせよ激しい感情は判断を鈍らせ、大局を見誤らせる。
新たな惨劇の種となるのじゃ。」
「うさぎさん…」
ただでさえ頭が上がらないうさぎに正論を繰り出された水原は言葉を詰まらせたが、景時と薫に視線を走らせ、声を高めた。
「それは彼らだって同じだ。
彼らだって復讐のために」
「同じではない。
その者らは己の意思で動いておる。
寺の者らもじゃ。」
「私だって!
自分の意志があるからこそ、復讐を…
───────────え?」