赤い月 参

「…
みんな知って…?」


「寺の者は皆知っておる。」


どうして…、と水原は俯いた。
膝に置かれた拳が震えている。


「どうしてであろうな?
鬼を狩る筈の者らが、鬼である妾と寝食を共にする。
鬼への憎しみに囚われたそなたの心では、理解できまい。」


うさぎは水原に銀の髪が流れ落ちる背を向け、彼女の定位置であるロッキングチェアに向かった。
カーテンを少し開け、月を見上げながら腰を降ろす。


「さて尚人、そなたはどうする?
妾を狩るか?

それも良い。」


「いやいや。
ソレはダメだから。」


「おいおい。
物騒なコトけしかけンなよ。」


顔を上げた景時と薫が揃って、許さん!、と水原を箸の先で指すが、もう行儀が悪いと叱る声もない。

< 63 / 223 >

この作品をシェア

pagetop