赤い月 参

うさぎの呟きが消え、水原が静かに席を立つ。

玄関扉が閉まる音を聞いてから、景時は携帯を手にした。


「ジジィ? 今、出た。
今夜は動くカモ。頼むわ。」


「まぁ、いいタイミングじゃね?
ドラゴンのほうもサッパリだったみてぇだし?」


携帯を置いた景時に、豚汁を啜り終わった薫が声をかけた。


「んー…
史跡とか伝承とか、色々当たってくれたみたいなんだケド、ね。
ソレらしいのも『闇』の塊も、察知できなかったみた…
あぁ?!」


最後に残った唐揚げに伸びた景時の箸を掠めるように、薫が獲物を奪った。


「早い者勝ちー。
…アイツ、どーすンだろな?
って、おい!」


ニヤニヤしながら薫が見せびらかす箸の先に刺さった唐揚げに、景時が食いつく。

唐揚げ争奪戦は、景時に軍配が上がった。

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