赤い月 参

不服そうに茶を一口飲んだ薫が、溜め息を吐きながら言った。


「なー、なんかわかったら俺にも教えてくれよ?
誰かサンがいなかったら俺もあんな風になってたかと思うと、ほっとけねーンだよ、あのオッサン。」


「そりゃ、もちろん…
誰かサンって?」


薫は興味津々といった景時の顔を数秒間じっと見つめた後、大きな手で彼の赤い頭をクシャクシャに撫で回す。


「ちょ、薫。
ナニす」


「イヤガラセ。」


膨れる景時に苦笑しながらごちそーさん、と立ち上がった薫が、月を見上げて動かないうさぎにチラリと視線を送った。

人指し指を口につけて景時の肩を叩き、無言で外に出るよう促す。

景時もうさぎを少し悲しそうに見てから、薫の後に続いた。

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