赤い月 参

「なに?」


家の中とは言え、リビングと違い廊下は少し寒い。

景時は両腕を抱えるようにして、身を縮ませた。


「おまえ、うさぎサマがココに来る前のコトとか聞いてンの?」


「いや、全く。」


眉根を寄せる薫を叱られた子供のような顔でチラっと見て、景時は俯きながら赤い髪を掻き上げる。


「…なぁにやってンだ。」


薫は溜め息を一つ吐き、情けない顔をした景時の鼻をギュっとつまんだ。


「痛いぃ。」


「ありゃ、なんかヤベぇぞ。
ナニがあったか知ンねぇケド、かぐや姫より存在が希薄じゃねぇか。
あの人、あんなに儚げだったか?」


「…たまに。
とりあえず、放して。」

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