赤い月 参
「悪い夢でも見たのか?」
「あー… あはは。
カッコ悪ィ、俺。」
髪を掻き上げ唇を歪めて笑うと、うさぎも薄く微笑みながら首を左右に振った。
「夜明けはまだ先じゃ。
眠れるか?
それとも話し相手が必要か?」
景時は、柔らかい笑みを見せるうさぎをしばらくキョトンと見つめた後、ゴソゴソと布団に潜り込んだ。
腕を伸ばして、ベッドに座るうさぎの細い腰を抱きしめる。
「恐い…夢を見るんだ。
子供の頃からずっと。
最近は、見てなかったンだケド。」
「…」
「母さんが、誰かに食べられる夢。」
「…」
「…笑わねぇの?」
幼い表情でうさぎを見上げた景時の頭を、白い手が優しく撫でる。
「笑わぬ。」