赤い月 参

「のぅ景時。」


ソファーからキッチンを振り返ったうさぎが、景時に声をかけた。


「んー?」


「そなた最近、寺に顔を出しておらぬようだが。
何かあったのか?」


「ぉぅわっっ」


危うく手鍋を落としそうになる。

ソレだー…

可愛いうさちゃんに脳ミソを溶かされて、肝心なコトをすっかり忘れていた。

景時は今、重大な問題を抱えている。

今までことごとく避け続け、逃げ切りを計ってきたのだが、そうも言っていられない事態になってきた。
問題の転がりようによっては慈龍寺存亡の危機かもしれないと、景時はおろか、彼の祖父であり慈龍寺の代表でもある高杉秋時(タカスギアキトキ)もこの状況を非常に重く見ていた。

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