赤い月 参
「うむ。ゆこう。」
…へー、ゆくンだ?
二つ返事で着いて来るンだ?
うさぎが鞄を持って立ち上がる。
「高杉に…
言わなくてイイの?」
最後のチャンスかもよ?
「良い。
童ではないのじゃ。」
うさぎが小首を傾げて苦笑した。
細い指を顎に当てて、首を傾げる。
これは彼女の癖。
本当に可愛い人だ。
綺麗で、真っ直ぐで、なんて言うか…純真。
高杉があそこまで惚れ込む気持ちもよくわかる。
意地っ張りで強気に見えるが、実は泣き虫で脆い部分がある、どことなく自分とよく似た匂いのする祥子がいなきゃ、俺だって夢中になっていたかも。
でも今は、うさぎの目を見るのがコワい。
その大きな瞳に、その穢れない心に、自分はどう映っているんだろう。
「じゃ、行こうか。」
うさぎの視線から逃れるように、大吾は彼女に背を向けた。