赤い月 参

大吾は路地を抜けたところにある廃ビルのような建物を指差して、笑いながらうさぎを振り返った。

だが、その瞳には苦悩と悲哀が漂っている。


「俺、昔バンド組んでてさ、あの店でクスリ売ってンの知ってたンだ。
バンドは解散したケド、バンド仲間がクスリにハマっちゃって。
俺も売人やらないかって、誘われてンの。
学生をカモにするなら、パイプ持ってるヤツがいたほうがやりやすいだろ?」


「…」


「祥子はねぇ、鬼神サンと交換だって。
ソイツ、アンタのコト気に入ったみたいでさ。
俺、鬼神サンを騙して連れて来たンだよねー。」


ほら、逃げろよ。

俺はこんな腐ったヤツなんだ。

アンタみたいな人から見りゃ、目にするのも汚らわしい男だろ?

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