揺れる水面 映る月影は何処から
「ありがとう、土方さん…」
「はっ?」
すると、妃絽は土方の横を通り過ぎる時にそう呟いた。
土方が慌てて妃絽の方を振り返ると、彼女は耳まで真っ赤にして歩いていた。
「可愛いげのねぇ女だな…」
土方は頭を掻くと、妃絽の後ろを追うようにして走り出した。
すると、天王山の山道から下りて来る永倉達が目に入った。
永倉達曰く、長州の奴らは残らず腹を斬っていたらしい。
「ごめん、土方さん」
妃絽は自分のせいでタイムロスしてしてしまったことを謝った。