揺れる水面 映る月影は何処から


「クナイに神経毒…。えげつな真似しよるなぁ。これ、下手したら、神経毒の他に毒が入っとるかもな…」



山崎の顔が次第に険しくなって行く。



彼は大坂の針医者の息子だ。



しかし、武士に憧れ、新選組に入隊した。



そして、その医術に心得があることを買われ、監察方の他に医療担当も任されていた。



「それに、出血は刺さってるクナイで防いでる。かと言って、抜かんと妃絽の命が危険や…。どうするべきか…」



医術に心得がある山崎でさえも頭を抱えてしまう程妃絽の怪我は酷かった。



手のうちようがないことが分かると、室内に重苦しい空気が流れる。







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