揺れる水面 映る月影は何処から
「ああ。妃絽、傷は痛むか?」
今まで名字呼びだったのに、どんな心境の変化で名前呼びになったのだろうか?
妃絽はそんな疑問を抱きながら、頷いた。
起きる前からだが、縫合した傷がジュクジュクと痛み、半分はその痛みで目を覚ましたようなモノだった。
すると、妃絽の目の前に湯飲みと薬包紙が差し出された。
「何これ?」
「薬だ。起きて飲め」
妃絽はその言葉に顔を引き攣らせると、再度布団に潜ろうとした。
「待て待て、潜るな!」
土方は布団を引っ張り、妃絽を潜らせないようにした。