揺れる水面 映る月影は何処から


そうぼやくと、沖田は優しく妃絽の髪を乾かし始めた。



彼にしては珍しい心遣いだ。



「あんたこそ、身体に気を付けてよ。組長が倒れたら、隊士に示しがつかないでしょ」



沖田は近い未来、肺結核を患う。



それを知っている妃絽は遠回しに彼の身体を気遣った。



すると、全身を背後から包まれる感覚に襲われた。



「沖田さ、ん…?」



耳元で感じる息遣いと薄い布越しに感じる温もり…。



ようやく、妃絽は沖田に後ろから抱きしめられていることに気が付いた。






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