揺れる水面 映る月影は何処から
「いい加減に機嫌を直してくれないか?」
見知らぬ男がそう言って来るが、妃絽は完全無視。
「せめて、名前を――」
「近藤さん!何で、間者かもしれねぇ奴の機嫌をうかがうんだよ!アンタは新選組の局長なんだぞ!そんなことしなくて良いんだよ」
妃絽の機嫌を直そうとする男を昨晩会った美丈夫が叱った。
叱ったと言っても、その眼差しは妃絽達に向けるそれに比べ、優しさが感じられる。
それ程、彼は男を信頼しているようだ。