揺れる水面 映る月影は何処から
その夜。
妃絽は夜の京の街に出ていた。
空には真ん丸の月が悠々と居座っている。
「綺麗な月夜やな、妃絽?」
すると、隣を歩いていた山崎が声をかけて来た。
何故、監察方である山崎がいるのかと妃絽は怪訝に思った。
彼だけではない。
今夜の巡察の面子が異様なのだ。
本来、新選組は市中巡察の際は各組ごとに行う。
しかし、今夜の場合は隊士はなく、幹部と夏樹だけで行っている。
ましては妃絽と夏樹の事情を知る幹部だけなのだ。
「もしかして…」
彼らは今夜の満月が未来に帰れる道が開かれる日だと知っている――?