揺れる水面 映る月影は何処から


すると、土方は切っ先を突き付けたままジリジリと妃絽に近付いて来た。



妃絽は反射的に後ろに下がる。



が、すぐ後ろには川がある。




落ちてしまえば、此処にはもう来られなくなってしまう。



「あんた達は私を必要としてくれていたんじゃないのか…?」



「…………………」



「答えろよ!私は――」



――トン。



肩に軽い衝撃を感じると、身体がフワリと浮いた。



背後には水面があることから、突き落とされたことが分かった。



妃絽の目には遠くなる土方達の姿と後を追って川に飛び込んで来た夏樹の姿が映っていた。



しかし、その視界も入水と同時に水泡と水柱の中に消えて行った――。







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