揺れる水面 映る月影は何処から
「ねぇ、夏樹。あれは夢だったのかな…」
妃絽はソファーの上に寝転がると、腕を額に乗せた。
そんなはずはない。
現に妃絽の部屋には幕末で着ていた着物があり、腕と太ももには任務中に負った傷の跡が残っている。
こんなにも幕末にいた証拠があるというのに、夢で片付けられるはずがないのだ。
「妃絽…」
ソファーの縁に座っていた夏樹はそんな妃絽を心配そうな目で見ていた。
すると、娯楽室のドアが開いた。
「妃絽、此処にいたのか」
そこには夏樹の父であり、この時の都の理事長(園長)である齋が立っていた。