揺れる水面 映る月影は何処から


妃絽は自分ばかりが苦しんでいると思っていた。



しかし、実際は両親も苦しみ、悔やみ、哀しんでいた。



今日迎えに来たのだって、ようやく決心し、此処にやって来たのだ。



おそらく、両親は恨まれていることを承知の上で彼女を迎えに来たのだろう。



それがどれだけ勇気のいることなのかは妃絽にも薄々感じられる。



両親の気持ちに気付いた妃絽は複雑な気持ちになっていた。



「だから、姉さん。父さんと母さん、姉さんと俺の四人で暮らそう」



櫂人は促すような眼差しで妃絽を見つめていた。






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