揺れる水面 映る月影は何処から


それでも、今の妃絽にはどちらか一つを選ぶなんて出来なかった。



「…そっか。今は選べないよね。でも、これだけは忘れないでね、姉さん」



「何?」



「俺達は姉さんが帰って来るのを待ってる」



櫂人は笑みを浮かべながらそう言うと、玄関から出て来た両親と共に帰って行った。



妃絽はベンチに座ったまま、帰って行く三人の背中を見送っていた。






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