揺れる水面 映る月影は何処から


開けるように促され、包みを広げてみると――。



「振袖?」



中には水色の布地に華やかな花の模様が入っている振袖だった。



「お前の成人式用に誂えた振袖だ。もう少し先に渡すはずだったんだが、少し早まったな」



齋は苦笑を漏らす。



その目にはうっすら涙が浮かんでいた。



「江里に感謝しないとな」



「え?」



「俺に二人の可愛い子供を授けてくれたからな」



齋の妻であり、夏樹の母である江里に妃絽は見つけられた。



いわば、彼女は妃絽の命の恩人。






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