揺れる水面 映る月影は何処から


妃絽は土方の行動に呆気を取られていた。



そんな彼女に構わず、土方は袂から手ぬぐいを取り出し、止血を始めた。



傷口に異物が触れたことにより、痛みが走ると呆気を取られていた妃絽も正気を取り戻す。



「ひ、土方さん!何で、天王山に向かわないんだよ!逃がさないんじゃないのか!?」



「うるせぇ、少し静かにしろ。傷に障るだろうが」



「私のせいで逃げられるなんて…、奴らに切腹なんてさせたら駄目だ!」



「うるせぇって言ってんだよ!俺が与えた任務で怪我した奴を放って行けるかよ!」



土方に怒鳴られ、妃絽は唇を噛み締めると、押し黙った。






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