揺れる水面 映る月影は何処から
怪我をしたのは自分が無理したからだと妃絽は言おうとしたが、言っても、また同じことを言われて終わりだ。
そう感じた妃絽は何も言わず、静かに治療を受けていた。
「これでよし。サラシきつくな――、っ!?」
治療を終え、顔を上げた土方はギョッと目を見張る。
それは、妃絽が瞳に溢れんばかりの涙を溜めていたからだ。
「何故泣いてんだよ!?」
「うるさい!見るな!」
妃絽は身体を小さくするとその膝の上に腕を置き、そこに顔を埋めた。
「私は皆の役に立ちたいだけなんだよ…。なのに、迷惑をかけて…」
妃絽は唇を噛み締め、自嘲気味に呟いた。
出会ってから大して日にちは経っていないが、土方がこんな弱気な彼女を見たのは初めてだった。