花と蝶
明かりを消して真っ暗になった私の部屋に光が射し込んだ。

ゆっくりと扉が閉まる音がする。


気配が近付いてくる。


すると、髪を何かがとく感触がした。


小さい頃から知っている長くて細い指だ。


柔らかな動きで髪をなぜ、次に頬に滑る。


それから

まぶた、こめかみ、


最後に唇。





私はできる限りの力を抜いて、
気づかないフリをする。


ぎゅっと布団の中で拳を握りしめる。





その優しい感触に
心が囚われないように。



囚われる前にその儀式が終わるように祈りながら。


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