最近なじみました。


「本当に何も覚えてねえのか、」


「うん」


整った彼の顔が歪むのを見て罪悪感を感じる。


別に好きで忘れてる訳じゃないのだけど…



しばらく気まずい沈黙が走る。



「ん、見ろよこれ」


手帳みたいな物に挟まれていたそれを見て気付く。



これ―――あたしだ。


それは幼きあたしの泣きそうな顔と、それを見て困った顔をしている男の子が写っている写真。



「あ、思い出した」


近所に住んでいた男の子だ。


小さい頃はよく遊んでいたかもしれない。



そして、写真と目の前の彼の顔を5、6回見比べてやっと理解した。



「あ…、たっくんだ」


「やっと気付いたか、ばかちず」



ふと、柔らかく微笑んだたっくんに不意に頬が熱くなった。


ずいぶん変わったけど、相変わらず顔は整ってやがる、この人。


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