ブルーブラック【番外編】

智に勢いよく頭を下げてお礼を言って椿は走り去って行った。

その後ろ姿を見て、やれやれという感じで溜め息をつくと、智も上着を手にしてバッティングセンターを後にしようとした。

明るい照明のあったグラウンドから一歩外に出ると、ひと際暗く感じられる夜の空の下を一人歩きだそうとした時だった。


「―――あの」


振り向くと見たことのない女性がこちらを見て立っている。
周りを見ても誰もいない。
明らかに智に話しかけていた。


「・・・はい?」
「あの・・・椿と・・神野椿と一緒にいましたよね?」


直感のいい智はすぐにある可能性に辿り着いた。
そして気が付いた。このバッティングセンターには出口が二つだったことも。


< 55 / 112 >

この作品をシェア

pagetop