cяimson moon 赤い月 extra
「佐々木。」
「っ!!
ハイ!!」
同じ『佐々木』でも、この『佐々木』は違う。
静かだが、否応なく従ってしまう威厳に満ちた声。
佐々木が姿勢を正して振り返ると、予想通りの人物が立っていた。
鬼神うさぎ…
「これを、そなたに。」
彼女が小さな紙袋を差し出した。
手を伸ばして受け取ると、微かに甘い香りがする。
「え…
コレって…」
「そなたに取っておいた。
景時には内緒じゃ。」
人差し指を口に当て、薄く微笑む。
「最近、疲れておるようじゃ。
糖分を摂れ。」
「…」
「背を丸めるな。
前が見えぬぞ。
胸を張って歩くが良い。」
「‥‥‥ハイ。
アリガトウゴザイマス…」
満足そうに頷いて歩み去る彼女の後ろ姿を、佐々木は放心したまま見送った。