cяimson moon 赤い月 extra

彼女は笑う。


「童のようじゃぞ?
そなたは妾の親代わりでもあった筈じゃが?」




全く。
何もわかっていない。

童ではなく男だから、拗ねもするし、妬きもするし、心配もするというのに…

何百年歳を重ねようと、男の気持ちなどまるで理解していない。

純粋培養しすぎたか?

そのくせ…


「そう拗ねるでない。
此処は山奥じゃ。
夜になれば、誰も来ぬ。」


身を屈め、頬に口づけを落とす。

そしてまた、彼女は笑う。

少女のようにあどけなく。

…無自覚の悪女め。

いつもこれに騙される。
いつもこれに誤魔化される。

だが、それで良かった。
儂は彼女の笑顔を愛していた。

彼女は笑っていた。

人間の愚かしさや卑しさに、何度涙しようと。

彼女はいつも最後には笑っていた。

楽しそうに。
幸せそうに。

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