cяimson moon 赤い月 extra

うさぎが両親に向かって空いている片手を翳した。

本当に遠慮して。
充分に配慮して。
ほんの少しだけ鬼気を放つ。

両親の動きが止まった。

だが必死で抗っているようだ。
額に浮かぶ脂汗が見える。

両親の顔が青ざめた。

ナニもされてないのに、動けなくなるなんて…

認めざるを得ない。

オニだかなんだか知らないが、娘は美しいが得体の知れないバケモノに捕まったのだ。

ニヤリと笑う女の口に牙が覗く。

娘は餌になってしまうのだ…

母親が悲鳴を上げた。


「私!
私が代わりになるから、光を返して!!」


父親も悲鳴を上げた。


「いや、俺だ!
光には、まだ母親が必要だ!!」


二人は顔を見合わせる。


「ちょっと、アンタは黙っててよ。
食べられちゃうのよ?
死んじゃうのよ?」


「おまえこそ、黙ってろよ。
こんな時くらい、俺の言うこと聞けよ。」

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