cяimson moon 赤い月 extra

目の前の鬼を置き去りに、夫婦喧嘩が始まる。

俺だ、いや私よ、おまえは生きろよ、はぁ?アンタが生きなさいよ、グズグズしてたら光が食べられちゃうだろ、アンタがグズグズしてンじゃないの…

うさぎは堪えきれず、横を向いて肩を震わせた。


「ね?
いつもあんななの。」


うさぎの腕の中の少女が、呆れた声を漏らす。


「だが、二人してそなたを思い、二人して互いを思い合っておる。
その気持ちが高じて、口論になるのであろうな。」


微笑みを浮かべながらそっと頬を撫でる鬼を、光は見つめた。

パパとママはビビってるようだが、あたしは少しもコワくない。

ほんとにキレイ。
いい匂いがする。
抱きしめる腕が優しい。


「わかったか?
そなたは両親に愛されておる。
両親は愛し合っておる。」


月のように穏やかな鬼の声に、光は力強く頷いた。

< 129 / 212 >

この作品をシェア

pagetop