cяimson moon 赤い月 extra
目の前の鬼を置き去りに、夫婦喧嘩が始まる。
俺だ、いや私よ、おまえは生きろよ、はぁ?アンタが生きなさいよ、グズグズしてたら光が食べられちゃうだろ、アンタがグズグズしてンじゃないの…
うさぎは堪えきれず、横を向いて肩を震わせた。
「ね?
いつもあんななの。」
うさぎの腕の中の少女が、呆れた声を漏らす。
「だが、二人してそなたを思い、二人して互いを思い合っておる。
その気持ちが高じて、口論になるのであろうな。」
微笑みを浮かべながらそっと頬を撫でる鬼を、光は見つめた。
パパとママはビビってるようだが、あたしは少しもコワくない。
ほんとにキレイ。
いい匂いがする。
抱きしめる腕が優しい。
「わかったか?
そなたは両親に愛されておる。
両親は愛し合っておる。」
月のように穏やかな鬼の声に、光は力強く頷いた。