cяimson moon 赤い月 extra

「ならば、もう家出などするでない。
帰って、てすとを両親に見せてやれ。」


腕から降ろされた光は、両親に駆け寄ろうとして…振り向いた。


「ありがとう、お姉ちゃん。

もう… 会えない?」


「次にそなたが夜遊びをしていたら、妾が喰らってやろう。」


「ウソばっかり。
お姉ちゃんは優しいもん!」


口を開けて牙を剥き出したうさぎに、少女は楽しそうな笑顔で答えた。


「だが、両親には言っておけ。
喧嘩ばかりしておると、また鬼がそなたを連れに来るぞ、とな。」


「うん!
お姉ちゃん、名前は?」


うさぎは一瞬迷う。

いつも呼ばれてはいるが、自分から名乗ったことはないような気がする。

妾の名…


「…
うさぎじゃ。」


「ほんとー?
カワイー!
またね、うさぎお姉ちゃん!」


「…
また、な。
ひかる。」


少女が喧嘩を続ける両親に抱きついたのを確認して、うさぎはまた流星になった。

< 130 / 212 >

この作品をシェア

pagetop