cяimson moon 赤い月 extra

(参ったな…)


漫才師のような夫婦とその娘のせいで、帰りが遅れた。

ベランダからそっと窓の中を覗くと、景時が必死の形相で部屋中を動き回っていた。

大人しく留守番しているはずの自分を探しているのだろう。

冷蔵庫の中まで覗き込む彼を見て、うさぎは吹き出しそうになった。

ソコはナイ。

着物で出てしまったのが、マズかったのかも知れない。

散歩ではなく、この地を離れたと勘違いしているのかも知れない。


(どうしたものか…)


フツーに帰るか?
テヘ☆とか言って。

無理だな。
確実に叱られる。

上からイくか?
ナニが悪い!とか言って。

コレも…
さらに叱られそう。


「あ。」


対応をあれこれ考えていると、部屋にいる景時と目が合ってしまった。

向こうも、口を『あ』にしている…

< 131 / 212 >

この作品をシェア

pagetop