cяimson moon 赤い月 extra

息子を大きな背に乗せて裏山の中腹まで跳ぶと、彼はカワイイ歓声を上げる。

子供サイズの小さなおにぎりと水筒を持って、毎晩ちょっとしたピクニック気分だ。


「父さーん!」


夫が地面にシートを広げている間にさっそく木によじ登り始めた息子が、ナニカを発見したようだ。


「カブトムシー!
カブトムシがいるー!!」


「捕マエルカ?」


夫の声に、髪を弄りながらしばらく考え込む息子。


「んーん。いい。
急にいなくなると、おうちの人が心配するし。」


…おうちの人って。

妻が傍にいるからだろうか、息子は本当に優しい子に育った。

思いやりがあり、自分のことより先に、他人のことを考える。

そんなんで生きていけるのかと、ちょっと心配になってくる。

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