cяimson moon 赤い月 extra
「父さーん!」
夫が物思いに耽っている間に、息子は木のてっぺん近くまで登ったようだ。
「びゅーん!
びゅーんするから!
拾ってねぇぇぇ!!」
「任セロ。」
夫が声を掛けると、息子は勢いよく木から飛び降りる。
そりゃもうムササビのように。
なんの躊躇いもない。
まさに、びゅーん。
造作もなく受け止めた夫の腕から飛び出し、またも木に登り始める息子。
夫が傍にいるからだろうか、息子はなんともアクティブに育った。
木でも岩でも、サクサク登る。
驚異の運動神経。
少しくらいのケガなど、気にもしない。
インデ○ー ジ○ーンズにでもなる気だろうか。
転がる巨大な岩が心配になってくる。
だが…
あまり危ない遊びは、いずれやめさせなければ。
『ある事情』を抱えた夫以外に、びゅーんを受け止められる奴などいないのだから。