cяimson moon 赤い月 extra

「すぐ戻ってくンだろ。
変な気配もナイし。」


頭を抱え、千切れんばかりに振り回して苦悩する景時の肩を、薫が叩いた。


「…
ほんと?
戻って来る?」


(捨てられた子犬か。)


眉をハの字にし、潤んだ目で袖を引っ張ってくる景時の赤い頭を撫で、薫はうんうん、と頷く。

うさぎは鬼神だ。
危険なんて滅多にない。

景時にだってわかっているはずだ。

なのにこんなに心配する。
なのにこんなに恐れてる。

彼女が、目の前から消えることを…

うさぎは鬼神だ。
危険なんて滅多にない。

だが、うさぎが望んで消えることは、いとも簡単なのだ。


(こんなに毎日くっついてンのに…
早くモノにしちまえよ。)


薫は苦く笑った。

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